2025/08/23 16:00

水が半分入ったコップを見て、「まだ半分もある!」と見るか、「もう半分しか無い!」と見るか。同じ事実に対して、捉え方は人それぞれです。


近年、南海トラフ地震や富士山の噴火など、激甚災害となりうる現象に対し、「今後○年で△%」という予測が示されることが増えました。たとえば南海トラフ地震(M8以上の巨大地震)の発生確率は「30年以内に80%」(2025年1月政府発表)と言われます。この確率をどう捉えるか。コップの話と同じように「30年後も20%の確率で地震は起きない」と捉えて、何も対策をしない人も居るでしょう。この「20%は起きない」という理解は「正解」ではあります。しかし80%の確率で起こる地震への対策をしないことは、はたして正解でしょうか?

そんな確率の問題を実際に体験してもらうために、「シミュレーション」をしてみました。300個の青いビーズに、7個の赤いビーズを混ぜ、30回ビーズを取り出すのです。30回は「30年」を意味し、取り出したビーズの色は、ある年に地震が起きるか(赤)、起きないか(青)を示します。300個中の7個は、とても少なく見え、実際に30回取り出すと、一回も赤色が出てこないこともあります(20%の確率でそういう30年が出現するように数を決めました)。

実際にやってみると「青、青、青・・・」と青ばかり出るので、地震を示す「赤」が出るとちょっと嬉しい気分になるのですが、これは地震発生なので現実世界では大惨事です。そして30回の取り出し(30年分)では、最初の10回以内で赤が出ることもあるし、30回目に出ることもありました。30年間に2回赤が出ることもありましたし(最高は3回)、2年連続で出ることもありました。

 生徒からは「(30回のビーズ取り出しのうち)1回目に出ることは無いだろう」という声も最初は聞かれましたが、まとめの段階では「1回目でも30回目でも他と同じ確率で出る」と答えてくれました。自分が握るビーズが「1回目だから青が出やすい」なんてことは無いと、理解してくれたようです。つまり、「30年以内に80%」で起こる大惨事は、明日起こるかも知れないのです!

それでも災害への備えをするかどうかは、やはり個人の考え方、つまり「哲学」の領域だと言えるでしょう。一方で「カンペキな備え」というものもありませんので、どれくらいの備えをするか、各自が「線引き」する必要があります。「正しく恐れる」と言いますが、つくづく難しいことだと思います。